AnotherVision Countdown Calendar 2019

AnotherVisionメンバーによる"Countdown Calendar"を2019年もお届けします

謎解きってなんだー!

 

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こんにちは!ひんがし(@mohudrum)です。

 

例によって軽く自己紹介します。



ひんがし

AnotherVision 4期

 

主な制作経験:

Reverse(マネージャー)

シークレットコード 不思議な暗号探偵 2巻巻末謎(統括)

Revolver(ディレクター)

 

好きなゲーム:チュウニズム、ソニックアドベンチャー2バトル

好きな漫画 :彼方のアストラ

好きな謎解き:最近だとゾンビラボ

好きな食べ物:たこやき!!!



ふだんはアナビの中で面白そうな制作に関わってみたり、スタッフや司会やってたり、チュウニズムを布教したりする人です。最近はRevolverで頑張ってました。






今日のテーマは

「謎について思ってることを言語化してみよう」

です。ありがち!

 

Revolverを作るにあたって結構真面目に謎について考えたので、謎って結局なんなんだーとか、面白い大謎ってなんなんだーとか、その辺の話をします。

 

抽象的な話ばっかりするので、もっと実践的な謎作りの話が読みたいよー!と言う方は↓の白岩ぱんださんの記事へどうぞ

 

謎解きゲームをつくるために大切なこと

http://www.pandabox.jp/column/column181222.php

 

注)ここから先の話は一個人の偏見にまみれた殴り書きです。内容の正しさは保証されませんし、どうせ2,3箇所矛盾してます。

とはいえ謎作ってる人なら「あ〜まあ大体そんな感じよねー」となってくれるんじゃないかと少し期待しています。

あと、めっっっっっっっっっっちゃ長くなってしまいました。どうせ大したことは言っていないので流し読みをオススメします。

 

ちなみに今回は製作者が謎解きゲーム用に作成するいわゆる「解ける謎」について扱います。フェルマーの最終定理とか宇宙の神秘みたいな「ガチの謎」は扱いません。

 

それでは本編へGO!



 

はじめに




いきなりですがここで質問です!!

 

「謎解きって一体なんですか?」



。。。謎解き系のアドベントカレンダーで5万回は聞かれたであろう質問ですね。

 

AnotherVisionの新入生向けに行われる「謎制作講座」の資料の中では、こう定義されています。



謎解きとは、

特別な知識は必要とせず「ひらめき」さえあれば誰もがクリアできるゲーム

である。



謎解きの要点は「ひらめき」であると。なるほどなるほど。











。。。。ところで「ひらめき」って何ですか?



意外とこの問いに明確な答えを持っている人は少ないのではないでしょうか。

適当に辞書を引いたら「閃き 【意味】1.ひらめくこと」とあったので辞書をぶん投げました。

 

土台が曖昧な状態で議論を始めることは不可能なので、まずはこの「ひらめき」を言語化するところから始めましょう。






「ひらめき」ってなんだー!

 

この章の目的は「ひらめきを言語化することです。

 

で、書いたはいいもののすごく抽象的かつ上手くまとめられなかったので、先に結論を述べておきます。

 

・「ひらめき」とは、「情報どうしの隠れたつながりを発見すること」である。

・ひらめきの評価基準は「意外性」と「納得度」である。



ここから長々と話して結局この結論に行き着きます。ここいらないって方は次の章へどうぞ。というか「意外性」と「納得」についてはすでに↓の記事で語られているのでそっち読んだ方がわかりやすいです。

 

謎の本質を追うことで見える「すべて」の話

http://puzrar.hatenablog.com/entry/2014/12/26/050719

「ナゾトキは好きだけどパズルは嫌い」とか言ってるヤツなんなの?

http://shanaoka.blog.fc2.com/blog-entry-5.html



 



「ひらめき」について言語化するのは難しくても、我々は「ひらめき」が起こる瞬間をよく知っています。ひらめきは「謎が解けた時」に起こるのです。

 

では、別に謎でもなんでもない算数の問題を解いていた時に「ひらめいた!」という経験をしたことはありませんか?ありますよね(断定)。逆に、「謎」を解いたはずなのに大してひらめかなかったという経験もあると思います。

 

では「ひらめき」は一体どのようにして生まれるのでしょうか。考えていきましょう。




問題を解くという行為

 

謎解きに限らず、学校のテスト、クイズ、パズルなど、「問題を解く行為」は大体こんな感じのプロセスで構成されていると言えます(言えることとします)。

  

  • 分析:問題をパーツごとに分ける。
  • 理解頭の中で各パーツとつながりを持つ知識を探索する。
  • 作業必要な知識に従って答えを導き出す。

 

 

この中で「ひらめき」が起こる可能性があるプロセスは理解の部分であると言えるでしょう。そしていわゆる「謎ではない普通の問題」と「謎」を解くプロセスを比較することで「ひらめき」の存在に一歩近づける気がします。

 

具体例に沿って見ていきましょう。次のような問題があったとします。



問題A

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わー簡単!



 

この問題を解く際、あなたの頭の中では次のような作業が(おそらく一瞬で)行われます。

 

1.分析

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あなたの鋭い頭はこの複雑な問題を瞬時に「問題文」と「式」に分解するでしょう。

 

2.理解

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あなたは幸い「文字」の知識を持っていたので問題文を理解することができました。

また、あなたは「足し算」という知識を持っていたので「これは足し算の問題だ!」と理解することができました。

 

この時、あなたは「文字」と「問題文」。「足し算」と「式」の間に確かなつながりを見つけます。

 

3.作業

あなたは「文字」の知識により目的を理解し、「足し算」の知識を使い、答えが「2」であると導くことができました。



。。。こんなの当たり前だと思ったあなた。私もそう思います。

 

では、少し問題を変えてみましょう。



問題B

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今回はこの問題は「謎」であるという体で進めます。つまんない問題とか言わない。

この場合、思考プロセスはかなり違ったものになってきます。



1.分析

問題を要素に分解します。ここは大体同じ

 

2.理解

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手書きにするんじゃなかった!

先ほどと同様、「文字」の知識で「問題文」を理解します。

2つならんだ式には、「算数」の知識を適用しようとしますが、どうやら上の数式が引き算のルールを満たさないようです。

 

困ってしまいました。

 

」と「算数」の間のつながりが絶たれてしまいました。あなたの頭は「」と繋がりを持つ算数の知識を必死に探索しますが、これといった知識は見つかりません。

 

 

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ここで、あなたは「上下の式で=の長さが違う」という違和感に気がつきます(手書きだとわかりづらいね!)。そして、長さに関連する知識を探索し、「」の知識と「式(だと思っていた形の羅列)」との間に「左4つの形を組み合わせることで右端の形ができる」という隠れたつながりを発見することができました。

 

3.作業

ここもほぼ同じ、答え「田」を導いて終了。





この二つの問題を解く際の大きな違いは理解のプロセスにあるといえます。

 

問題BがAと違う所は「問題解決のために必要な知識が一見関係なさそうな、意外(意識の外)な場所にあったこと」です。

 

加えて、「問題解決のために必要な知識」の部分も重要です。

「いちたすいちは〜たんぼのた〜」などと言う小学生はいても、それをテストで本当に書く人は一人もいないでしょう。

小学校のテストでは、数式に対しては「算数」の知識を問題に適用することが要求されており、「形」の知識を適用する妥当性がありませんでした。

 

しかし、問題Bの場合は、「算数」の知識の正当性が剥奪され、「形」の方が正しいのだという例示まで存在します。ここまでしてようやく「形」と「式」の間に確かなつながりが出現し、自らの考えに納得することができるのです。



この「意外性と納得の両立」こそが、謎を謎足らしめる要素ではないかと私は考えます。

 

意外な情報同士の繋がりを発見した瞬間の「驚き」と、これが答えに違いないと納得する際の「安心」、この相反する二つの感情が同時に起こることが「ひらめき」と言えるのではないでしょうか。




意外性と納得度

 

うーん説明がへた!自分でもよくわからなくなってきました。

とにかく、ここまでの話をまとめると「意外性」と「納得度」によって、このような分類をすることができます。

 

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たしかに、言われてみればそんな感じしますね。意外性のない謎はほとんど作業みたいなものだし、納得度の低い謎はテレビの中でコナンくんが解くものです。成功率の低さを謳う謎解き公演に参加したら突拍子もない飛躍を要求されて「僕たちはコナンくんじゃないよ〜」ってなったことありませんか?

 

 

とにかくこれで「ひらめき」を言語化できそうです。

 

ひらめきとは、

「意外かつ納得できる情報どうしのつながりを発見すること」

である。

 

長いので分解して、ここから先は↓の定義で話を進めていきます。

・「ひらめき」とは、「情報どうしの隠れたつながりを発見すること」である。

・ひらめきの評価基準は「意外性」と「納得度」である

 

 

と、言ってみたはいいものの、解く側からすれば「意外かつ納得な知識を脳内から発掘すること」の方がしっくり来る気もします。とはいえ意外性と納得度について図解するなら「つながり」という表現を用いた方が都合が良くて。。。もっといい言い回しを思いついた方は教えてください。



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今後このような図がちょこちょこ出てきますが、この図において「丸(情報など)と丸の間の線」のことを「つながり」と呼びます。

そして、その線が長ければ長いほど「意外性」がある、太ければ太いほど「納得度」が高いということを表します。

 



というわけでここから先は「ひらめきの面白さは意外性と納得度で決まる!」ということを正しいとした上で論を進めていきます。



本当ならここから「意外性ってなんだー!」と「納得度ってなんだー!」に派生するのですが、これ以上は一旦やめておきましょう。



余談:いずれ勉強になる謎解きのはなし

謎解きが「意外な繋がりの発見」の楽しさに重きを置くいわば「頭の中で行う宝探し」なのに対し、勉強やクイズはつながりを見つけてくる力をひたすらに高める「頭の筋トレ」です。

最初は弱いつながりでも、反復練習を重ねることによってより素早く知識を引き出すことができるようになります。

それは謎解きについても同様で、その結果つまらなくなってしまったのがいわゆる「ベタ問」であるといえます。意外な繋がりも、なんども繰り返すと知識レベルに定着してしまい、意外性が失われてしまいます。かなしい。





「面白い謎」ってなんだー!

 

前の章において、ひらめきが「意外かつ納得できる情報どうしのつながりを発見すること」と定義しました。

この章は「面白い謎を作るためにフィーリングでやってることを言語化してみよう」のコーナーです。

 

なんだか自分が面白い謎を作れると言ってるようで非常に偉そうですね。

ちなみに私がRevolverに提供した小謎は一問のみです。だめだめです。

 

 

 

謎が「ひらめきを要求する問題」であるならば、

 

謎の面白さ = ひらめきの面白さ

 

であるといえます。もちろん違う面白さを提供する謎もありますが、私が謎に求めているのはひらめきの面白さなのでこのまま進めます。

 

では、制作者視点に立った時、「面白い謎」を作るためには、「面白いひらめき」を用意できればいいと言うことになります。

つまり、「意外性」と「納得度」を持った「情報同士のつながり」を「うまいこと隠す」ことができれば、面白い謎を作ることができます。たぶん。

 

ここでは、「面白い謎」を作るためにできることを4つあげたいと思います。

 

  1. いい題材を選ぶ(=意外性を高める)
  2. 導線をデザインする(=納得度を高める)
  3. 伏線を張る(=ひらめきの連鎖を起こす)
  4. できるだけ作業を減らす(=ひらめきを濃縮する)



いい題材を選ぶ(=意外性を高める)

 

「謎を作ること」は「ひらめきを作ること」です。まずは参加者が何に気づくことで問題が解けるかを考えます。

題材選びは謎の原石を見つける作業です。当然ながらより意外なつながりを用意できた方がより面白い謎ができます。

 

そして、残念ながら題材選びはガチャです。いい題材を思いつくための明確で簡単な方法なんてありません。

そして題材は一度謎に使われると鮮度が落ちます、SSRの題材を思いついてもすでに使われていた、なんてことはいくらでもあります。基本的に新しい素材を見つけてくる必要があるため、謎作りは大変になっていく一方です。

 

それでも排出率をわずかに上げる方法は存在します。いわゆる「発想力を高める」ってやつです。

 

この辺は調べれば詳しい説明がたくさん出てくると思います。

簡単に言うと「インプットをたくさんする」、「考え続ける」、「考え尽くしたらぼーっとする」、、、と、アイディアが出てくる確率が高まるんだって。ほんまかいな。

 

でも実際シャワーを浴びながらぼーっと考え事をしている時にふとアイディアが湧いてくることはよく起こります。そのまま風呂場を飛び出してプロットを書き起こす、とかよくやります。Revolverでは10回くらい風呂場から飛び出ました。

 

 

ちなみに、意外性は後天的に高めることも可能です。先入観を刷り込むってやつです。例えば、鍵のかかった箱を物理的に壊して先に進む謎だったら、それまでに何度も箱を鍵で開けさせて「箱は鍵で開けるもの」という先入観を植えつける、とか。*1

工夫次第では50音表のようなベッタベタの問題でもラス謎になり得るかもしれません。*2




導線をデザインする(=納得度を高める)

 

いくら意外性のある題材を掘り当てても、解法に納得できないようであればそれは「作者が考えてること当てゲーム」でしかありません。

 

解いて面白い、解説を聞いても不満に思わない謎を作るためには「思考の導線を整備する」という作業が重要になってきます。

 

そしてこの作業はガチャではありません!努力次第でなんとかなります!やった!!

 

では実際どうすればいいのかを見ていきましょう。

 

 

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いい感じに意外性のある題材(赤い波線)を見つけてきました。でもこのままでは納得度が低いようです。

 

納得度を上げるための方法は大きく分けて下の3つです。



・別解を潰す

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上の例では正解としたい繋がりよりも太い(納得度の高い)繋がりが形成され、ミスリードとなっています。

スリードの方を否定するような例示や条件を付け加えることで、正解の一意性を高め、納得度を上げることができます。



・ヒント(違和感)を配置する

 

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基本的に情報の繋がりの糸は長くなるほど細くなります(=意外性が高いほど納得度は低くなります)。割と当たり前ですね。

答えにたどり着くまでに大きな思考の飛躍が必要になる場合はヒントを配置してあげましょう。

違和感やヒントを足がかりにすることは少々意外性を損なうことにはなりますが、それ以上に納得度をあげる効果があります。



・答えのワードを工夫する

8割くらいのの謎には「答え」が存在します。答えが「もにょけろ」だったり「まちがい」だったりすると不安になりますよね。

答えのワードがその謎や公演の世界観に沿ったものだとより綺麗ですし答えが合っているという確信をより強くできます。

 

「答えは3文字のくだもの」みたいな指定もよくみますね。これはどちらかと言うとヒントになるのかな。




伏線を張る(=ひらめきの連鎖を起こす)

 

これまでの2つは発見するつながりの線を「長くする(意外性を高める)」「太くする(納得度を高める」という目的でしたが、べつに一度に発見するつながりが1つでなくてもいいよね、という話です。

 

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時々1枚謎だけで伏線回収をやってのける作品も目にしますが、基本的にこの手法は中謎、大謎と呼ばれる謎において用いられます。

 

謎の答えがわかった瞬間に、今まで感じていた違和感の正体がわかり、使用済みの情報が持っていたもう一つの意味が明らかになる。。。。アツイですよね

 

今回のひらめきの定義では表現がむずかしいのですが、

「すでにつながりができている情報から新しいつながりを発見すると意外性が高まる、結果的に情報同士が密なネットワークを形成するほど面白い」

ということかなと理解しています。

 

すでに解いた問題について新しい解き方(新しいつながり)を発見する「解き直し」も、この性質を利用していると言えそうです。



できるだけ作業を減らす(=ひらめきを濃縮する)

 

最後です。

「謎を解いたひらめきを最大化したいなら、ひらめき以外の部分を削ればいいじゃない」

という至極単純なアイディアです。

 

2章で説明したように、問題を解く際には「分析」、「理解」、「作業」の手順を踏みます。

 

このうち、ひらめきが起きるのは理解のタイミングのみなので、それ以外の分析作業はなるべく減らしちゃいましょう。

 

「分析」にかける時間を減らす

無駄に長い問題文だったり、半分以上意味のないことが綴られた日誌が手に入ったりすると、読むのが大変だーーってなってしまいますね。

ストーリーテキストについては没入度を高める意味合いもあるので好みによりそう。

 

あと、公演型における「壁に貼られたパネル」、これも基本的に情報を分散させて時間をかけさせるだけで、普通に使うだけでは「ひらめき」にはほとんど貢献しません。

この記事は「ひらめき」の話なのであまり触れませんが、もちろん役割分担を促すことでチーム内でのコミュニケーションを生む、みたいな良い点もあります。



「作業」にかける時間を減らす

「迷路を一筆書きで通って、Sを1文字目として4,7,11,23,28文字目を読め」っていうあれです。あとは「答えは①②③④」のような文字拾いとか。

 

答え合わせが必要な以上答えを求めるプロセスが存在するのは仕方のないことですが、謎の一番面白い部分は閃いた時点で終了しているので、その先はできるだけ短く済ませちゃいましょう。




余談:個人的につまらないと思う謎のはなし

謎に慣れてきてしまった方なら、謎を解いてる時に「この謎つまらないな〜」って思うこともあると思います。

私は最近まで「この謎がつまらないのはベタ問だからだ」と思っていましたが、最近はちょっと認識が変わりました。

解いている時に「ベタ問」なだけではつまらないとは(そこまで)思わないのです。確かに面白い謎の2割ほどしかひらめきは得られないものの、サクサク解けるためひらめきのコスパは悪くないのです。

 

問題なのは「ベタ問かつ作業が多い謎」です。こうなると時間効率も最低で何もいいことがありません。

こういった謎が生まれてしまう原因第一位は「解き直し」です。解き直す際の制約によりどうしてもパズル寄りになってしまうことは多々あります。

そして「うーんめちゃくちゃ条件がおおい。。。これは解き直しに使うな?」と思ってしまうともうおしまいです。後の解き直しで得られるはずだった意外性も半減し、解き直す時にも再度作業を強いられる。負のループ。

 

なので、解き直しは非常に面白い謎が生まれやすい反面、丁寧に丁寧に作ってあげないと逆効果になりやすいと思っています。制限時間がある公演型ならともかく、持ち帰り謎やLINE謎だとそこで見限られてしまう可能性も高いので。

とはいえ、このへんはわりと個人差がありそう。解き直しのくだりは謎解きを「体験」と捉えるか「作品」と捉えるかで評価が分かれそうです。





「大謎」ってなんだー!

 

この章では、大謎やラス謎と呼ばれる「謎解き公演の終盤で出てくるメインの謎」の話をします。大謎で公演の評価の半分は決まる、と言われるくらい大謎は大事です。

3章の「どうすれば謎が面白くなるか」から派生して「どうすれば面白い大謎を作れるか」について思っていることを書きます。

 

 



「謎」と「大謎」の違い

 

ここでもう一度質問です!



「大謎って一体何ですか?」

 

暇な人は少し考えてみると面白いと思います。























では私の考えを書きます。

 

「一番面白い謎が大謎」

 

うーーーんそれはそう。



もう少し具体的に言うと

「面白さを上げるために他の全てを捻じ曲げることが許されるのが大謎」

です。

 

普通の謎の場合、一枚の紙の中で、このアイテムを使って、といった制約の中で謎を作ることになります。

しかし、大謎を面白くするためであれば、ストーリーを変えることも、小謎の答えを変えることも、チーム数も会場も公演形態も変えることができますし、なんなら謎解きゲームではない形にすることだって可能です。

 

さながらわんぱくお嬢様。世界観もストーリーもキャラクターも何もかも全てが、大謎という壮大で矛盾だらけなわがままを叶えるためのお膳立てに過ぎないのです。

 

。。。極論だなあ。



「大謎」の作り方

 

さて、ではどうすれば「面白い大謎」が作れるのか。

 

実は手順自体はとても簡単で、3章で説明した「面白い謎を作るためにできること」がありましたね。

 

  1. いい題材を選ぶ(=意外性を高める)
  2. 導線をデザインする(=納得度を高める)
  3. 伏線を張る(=ひらめきの連鎖を起こす)
  4. できるだけ作業を減らす(=ひらめきを濃縮する)

 

これです。これを全部やります。全てのリミッターを外して。




いい題材を選ぶ

意外性が決まります!一番大事です。全力でやりましょう。

 

常識も物理現象も全部無視してぶっとんだアイディアをひねりだしましょう。整合性は崩壊しますがあとで世界観やストーリーが何とかしてくれます。きっと。

 

ただし先ほども言ったように題材選びはガチャです。こればっかりは考え続けるしかありません。




導線をデザインする

納得度が決まります!めちゃくちゃ大事です。全力でやりましょう。

 

大謎ともなると一定以上の難易度を保ちつつ納得度を上げるというかなりシビアな調整が要求されます。

 

・音や写真などを使って、印刷された文字以外での情報を残す。

・ラストに直接関わる情報は早めに出すなど、情報を出すタイミングに気をつける。

・公演内で一切出していない情報(一般常識など)をひらめきのパーツにする。

別解は絶対に潰す。全力で潰す。

 

などなど、工夫する点はたくさんありますが、一番大事なのはデバッグをすることだと思います。

制作に没頭した状態で初めてゲームを行うプレイヤーの脳内を想像することは非常に困難です。都度デバッガーの反応を見て軌道修正していきましょう。

 

ちなみに、アナビの公演では「綺麗な謎」とか「解ける謎を作るのが上手」といった感想を見かけることが多い気がします(気がするだけかもしれない)。

これは単純にアナビの構成人数が異常に多くデバッガーに困らないのが原因だと思います。普通のサークルは第10デバッグなんてしないもんね............。




伏線を張る

伏線回収!激アツです。全力でやりましょう。

 

伏線については「ヒントや違和感を仕込む段階で自然にできた」ものと「意図的に入れた」ものがあります。どちらにせよたくさんあった方が私は好きです。

 

伏線を定義するなら「直接的な解き筋にはならない違和感や情報」でしょうか。

逆に回収されない伏線は謎解き公演においてはあまり求められません。ネタバレ禁止で考察を共有しづらい文化が原因でしょうね。




できるだけ作業を減らす

地味に大事です!がんばりましょう。

 

ここで減らすべきなのは「キーとなるひらめきを終えたあとの作業」です。解法がわかったのにその後の作業に10分かかってタイムオーバーなんて絶対にさせてはいけません。

逆にひらめき直前までの作業が多い公演は結構見ます。ラスボス感が増してワクワクしますね。




ここまでしっかりと遂行することができれば、それなりの大謎ができるんじゃないかと思います。

そこから先はいわゆる「大謎はできた。あとは謎を作るだけ」タイムです。これはこれでたいへん。

 

 

おわりに

さて、ここまで全部読んでくださった方、お疲れ様でした。

 

これだけ長い文章を読んでもらって申し訳ないのですが、制作中にはこんなこと一切考えてません。

じゃあこの議論には意味なんてなかったのかというと、たぶんそんなこともなくて。

 

「曖昧な感情を一度掘り下げて自分の言葉で表現した」という事実は、

「面白さを評価・改善する」際に役に立つ、と思っています。

 

少し前でも話したように、基本的にアイディア出しはガチャです。面白いアイディアだけをぽんぽん生み出すことができるのは本当に一握りの天才だけです。

 

なので凡人の我々にできることは何でもいいからアイディアを出し続けて、その中からダイヤの原石を発見することです。

原石を見つけるためには、アイディアの良し悪しを見分けるための「面白さの基準」を持っている必要があります。

 

個人制作では、「なんとなく面白いからこれでいこう!」でもやっていけますが、チームでの制作となると「面白さを説明できること」「他人のアイディアの面白さを分析、改善できること」はめちゃくちゃ大事になってきます。*3

 

「この謎は解き直しだから面白い」と言われるのと、

「この謎は前の問題で先入観を植えつけて、それを裏切るから意外性があって面白い」と言われるのでは説得力が違いますよね。

 

もちろん「面白さの基準」なんて曖昧なもので、そもそも一人一人この基準は異なります。

しかし、だからこそ、制作で目指す方向性を明確にするために自分なりの「面白さの基準」を説明できることはとっっても大事だと思うのです。

 

一度「謎解きってどうして面白いんだろう」を自分なりに深掘りしてみてください。きっと僕とは違う結論に辿り着くはずです。

 

 

というか今回は「謎」に絞って話をしたけど謎解きゲームって謎だけじゃないからね!!ストーリーなり体験なりコミュニケーションなり他にももっと面白い要素あるもんね!

私は「ひらめき最重視派」ですが世の謎制作者さん達は多種多様な哲学で謎解きを作られていることと思います。是非とも知りたいのでブログを書いてリンクを飛ばしてもらえるととても喜びます。

 

 

ちなみにこの後おまけとしてちょっとだけ*4Revolverについて語っていたのですが、すごい調子乗ってるなこいつって感じだったので24日のリセくんに任せることにしました。もし聞きたい人は直接会った時にでも聞いてもらえると嬉しいです!

 

 

はい、この辺で終わりにしたいと思います!ありがとうございました!

明日は高校同期でもあるいつきの記事です。おうまさんについて熱く語ってくれると思います。お楽しみに!

 

 

 

*1:箱を破壊してもいいという理由づけも大切に。

*2:昔そんな感じの謎ときがありましたね......。

*3:Revolver制作でこれができてなかった部分があったので、反省ポイントです。

*4:3000字弱