終わり
この記事はAnotherVision Countdown Calendar 2019の一環となっております。
はじめに
はてなブログって「脚注の付け方が分かりにくいので、初めて記事を執筆した人の頭上に『?』マークが浮かぶ」のが名前の由来らしいですね。*1
どうもこんにちは、脚注数No.1*2 *3 を目指す7期のEM(@E_MAZE_M)です。団体内では主に謎制作を担当しており、twitter に飛んでもらえばどういう人間なのか何となく察していただけると思います。
2020年は時間にルーズなところを直していきたいですね。*4 あと、地方民だったのでまだ若干 web謎のほうが身近に感じられます。*5
AVCC2019の参加日程について「できるだけ遅めにしてくれると嬉しいです」とコメントしたところ、いつの間にか最終日の担当になっていました。*6
同日公開の6期のまるゆ〜さんの記事も宜しければご覧ください。
せっかく最終日なので、これまでの記事の中で個人的に特に共感したものも紹介しますね。*7 ここまで正鵠を射た記事を書かれてしまうと僕の謎解き観をわざわざ表明するまでもない気がしてしまいます。*8
まあ自分は大したことを書くわけでもないので、ブラウザバックするなら今のうちです。あと、この記事で『パスティール』のネタバレがあるわけではありません*9 が、「まだ体験していない公演に対する先入観を絶ッッ対に抱きたくない!」とお考えの方はブラウザバックしたほうが良いかもしれません。
当初はサクッと読める4文字以内の記事*10 にしようと考えたのですが、既に100文字以上書いてしまったので後戻りができなくなりました。今年も終わる*11 ということで、取り敢えず今回は「終わり」を主題に記事を執筆してみようと思います。
余談ですが、渋谷でカウントダウンの擾乱に紛れたりコンサートホールで『第九』を聴いたりしない一人暮らし大学生にとっては、大晦日は何の変哲もないただの1日なんですよね。*12 出不精なので故郷*13 に帰るのも億劫。
突然ですが、皆さんはあるなしクイズが好きですか?好きですよね?
ということで問題です。
下にスクロールすると正解があります。
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ということで正解発表です。
「ある」に含まれる言葉には全て「終わり」があります。
トラウマは癒える*14 し、ウミウシの寿命は短いし、ネタツイ*15 のブームはいずれ去るし、イヌ取り去るヒツジ*16 にもたぶん終わりはあります。
残念ながらぼくは不死身ではないので、この問題の答えは「ある」でした!*17
実は、万物には終わりがあります。ご存知でしたか?
無常観を綴る『平家物語』『方丈記』の時代から800年ほど経ち、社会や文化が激変した今でも、永遠不変のものはありません。たぶん『パスティール』の時代もそうでしょう。*18 *19 過ぎ去った時代のナゴリを掬い取るのは、その時代が過ぎ去ったからに他なりません。
強いて言うなら「万物には終わりがある」と言う事実だけは終わらないかもしれませんね。
当然の帰結として、謎解きにも終わりがあります。ここでは2つの「謎解きの終わり」について考えていきましょう。*20*21
謎解きのClimax
あなたの好きな謎解き公演は何ですか?*22
優れた謎解き公演では、一つ一つの問題の質が高いだけでなく「大謎」と呼ばれる山場が精巧に作り込まれており、参加者が衝撃を食らいます。*23
Climax *24 とか表現していますが、要は個々の公演の大謎、延いてはストーリー上のエンディングに関するお話です。
駒場祭公演がまだ構想段階のとき、制作指揮のタコワサビ*25 が会議でこのようなことを話していました。
「ハッピーエンドをやめたい」
当時はシリアス路線を突っ走るサスペンス寄りのストーリー*26 で考えていて、このあと悲しい出来事が起こることを知りながら最終行動をとらせようというのが制作指揮の意向でした。安直さを嫌い、体験としての衝撃を求めるのはクリエイターの性*27 。ただ、結局「駒場祭公演では、小学生や初心者を含め幅広い層のお客様に楽しんでいただきたい」「他にトゥルーエンドが存在するのでは? と疑われる可能性がある」などの思いがあったので、最終的には今のような形に落ち着きました。
ところで、なぜ多くの物語(小説、漫画、アニメ、ドラマ......)はハッピーエンドなのでしょうか。
それは、物語は本質的に「救い」だからです。
先の見えない人生に心を攪乱されて疲弊した人間に完璧な予定調和を楽しめる場を提供するのは、物語の1つの役割です。
アンパン戦士にあの手この手で苦痛を与える雑菌は最終的にはバイバイキンし、*28 イタズラをした坊主頭の野球少年は厳格な父親から「ばっかもーん!*29 」と叱られ、調子に乗ってひみつ道具の利用に失敗したメガネの小学生は「トホホ〜」と泣き噦る。
同様に、多くの謎解き公演には、どう足掻いても困難な状況を確実に打破する超革命的かつ推論可能な納得できる方法が存在するのが通例です。それがなければ謎解き公演ではない、という見方も可能でしょう。哀しきかな、現実世界ではヒラメキ1つで困難な状況を打破できることなんて殆どないんですよね...... (眼前に広がる未着手の課題の山を見ながら)
でも皆さん、ハッピーエンドではない物語──いわゆる「悲劇」の傑作はこの世の中に存在しますよね?
シェイクスピアの『ハムレット』は雑に要約すれば「人が殺し合う話」だし、国語の教科書で誰もが一度は読んだ『ごんぎつね』も雑に要約すれば「人が狐を殺す話」です。*30
これらの作品は一部の人には「胸糞悪い」と受け取られるものの、ある種のカタルシス*31 を精神にもたらします。それどころか、初め「胸糞悪い」と言っていた人の胸の中で様々な感情が去来した結果、その人の目から涙がほろほろと流れ出ることは往々にしてあります。*32
小説に関して言えば、僕はハッピーエンドよりもバッドエンドのほうが好きです。そこに感慨に耽る余地があるので。
しかしカタルシスは時間を要するため、謎解き公演という時間制限のある体験型ゲームの重要な局面で難しい道義的判断をさせるのは少々リスキーだし、だからこそ一つの正解を求めるスタイルが現在は主流になっているのだと思います。*33 その点、悲劇要素をエンディングムービーに組み込むのはかなり妥当だと考えられます。
なおこれは個人的見解であり、「謎解きはこうでなければならない」と規定するものではありません。ぼく自身、自分の知らない謎解きの形式に挑戦していきたいものですね。
ここまでの流れをまとめると、
- 完璧な予定調和を楽しめる場を提供するのは、物語の1つの役割
- それゆえにハッピーエンドの物語が多く存在する
- 対して、悲劇のもたらすカタルシスには固有の価値がある
- その要素を謎解き公演の大謎に組み込むのは難しいが、挑戦に値する
といったところでしょうか。
この記事書いていると、「公演ではないけどカミテガミの構成は天才的だなぁ」と改めて感じさせられますね.....
スクロールバーを見れば分かるように、この記事はまだまだ続きます。*34 休憩がてら他のオススメ記事も紹介しますね〜〜
謎解きのDecadence
Decadence *35 とか表現していますが、要は謎解きという文化の頽廃に関するお話です。
まあ、あまり考えたくない話題ではあります。
僕は数年前からこのようなフレーズを耳にしてきました。
「空前の謎解きブーム」
恐らく皆さんの中にも「聞いたことある!」と思った方はいるのではないでしょうか。興味本位でこれをGoogleで検索すると81700件がヒット。
トップヒットは2013年の記事で、概ね自分の認識と整合していました。あとはナゾトレ開始以降、最近はお茶の間でも楽しまれるコンテンツになっているようです。*36
そういえば、2020年末にFlashゲームのサービスが終了するらしいですね。画面上の脱出ゲームを端緒として登場した体験型ゲームが今ここまで人気を誇っているのは、まさしく換骨奪胎(?)という感じで喜ばしいですね。
それでは、
「絶後の謎解きブーム」
はどうか? 「日本語のコロケーションとして慣用的ではない」というツッコミをガン無視して検索窓に入力してみました。
たった8件。ということは今後謎解きブームが起こる可能性がまだまだあるんですね!やったー!
......
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......実際のところ、謎解きが10年20年経っても愛される安定したコンテンツになり得るのか、個人的には分かりません。というのも、流石にそれだけの年月が経てば飽きる人もいるかもしれませんし、そもそも創り手がいないと成立しませんし。
そこで、いつかは終わるにせよ「謎解き」というコンテンツが出来るだけ長生きするための方策を考えていきましょう。*37*38
まず、沼に in する人を増やし、沼から out する人を減らすことが明らかに要求されます。新規客も新規制作者も既存客も既存制作者も皆不幸にならないような世界を作っていくことが大切です。*39
そのためには 多様性 *40を認めることがある程度必要です。*41
好きな謎の多様性、解く能力の多様性、思考の多様性、......
これを見誤り、例えば謎解き初心者に10*10の盤面を使った作業ゲーみたいな問題あるいは画面の9割が黒インクにまみれた問題を出すと「何が楽しいの......? 物好きな人もいるんだなぁ」と思われるだけです。
逆に、制作者が10個くらいのパターンを使い回していると謎解き上級者は飽きます。
それを踏まえると、複数の制作団体*42が乱立していて、ホール型以外にも様々なシステムが存在している現状は歓待されるべきものではないでしょうか。
ところで、先に挙げた中にある「思考の多様性」を認めるとはどういうことでしょうか。
皆さんはこの記事の初めにこのような問題を目にしたはずです。
先ほどは「『ある』に含まれる言葉には全て『終わり』がある」と紹介しましたが、この謎には別解がありますよね?
「ある」に含まれる言葉は十二支だけで構成されていました。(トラ・ウマ・ウ・ミ・ウシ・ネ・タツ・イ・イヌ・トリ・サル・ヒツジ) 偶然12個全部含まれていましたね。よって十二支を含まない「ぼく」は「ない」に入ります。*43
しかし、探そうと思えば「ある」側の共通点なんていくらでもあります。
- 十二支が「1つ以上」含まれる (もし「『イ』を含む『オイラ』はあるなしのどちらに入る?」と聞かれると迷いが生じますよね)
- 十二支が「2つ以上」含まれる
- ローマ字表記したとき"u"が含まれる
- しりとりで使っても負けない (「イヌ取り去るヒツジ」使っていいの......?)
- 後ろから読むと言葉にならない (ここまで来るとイチャモン)
「どうせ解く側は『十二支』をすぐに連想するからよいじゃないか!」と思う方もいるかもしれません。確かにこの中では「十二支」という要素が最も確率的に起こりにくいし妥当です。
それでもやはり、制作者としては別解は可能な限り排除すべきです。今回は意図的に「なし」側を空欄にしましたが、もし「なし」側の単語をローマ字表記したとき"u"が全く含まれていなければ、それは立派な共通点です。その共通点を見つけてしまった人に「不正解です」と告げることは小さな裏切りであり、多様な解法の否定です。
少々逆説的ですが、自分の中で小謎の別解チェックは
多様性を傷つけないために一意性を確保する作業
のような存在です。ちなみに自分の中で「ノックスの十戒」*44 のような謎制作のマイルール*45 が確立しつつありますが、本当に脱稿が間に合わなくなりそうなのでその辺は割愛して一旦筆を置きます。
繰り返しになりますが、これは個人的見解であり、「謎解きはこうでなければならない」と規定するものではありません。こんな記事、痴がましいお仕着せにすぎないかもしれません。常識を破ること、型を破ることによって初めて見えるものもきっとあるはずです。
あともう少し補足すると、無料の謎解きを作れる場/無料の謎解きを解ける場 が多いのはとても好ましいことですね。現在なら twitter がよく機能していると思います。特に次世代の担い手である中高生の制作者のことは応援しています。
おわりに
ブログ編集画面の表示によると、既に7000字を超えている模様です。脚注が多いと読みにくいと思って結局途中から控えめにしました。
この記事書くのに2日半くらい掛かった......*46
皆さん、来年も思い思いの謎を作っていきましょう!
僕自身、どうせ年越しの瞬間にもtwitter上で謎*49を出題しますし、2020年もAnotherVisionでコンテンツを生み出していく所存ですよ〜
1年の終わり、AVCC2019の終わりを飾るこの記事「終わり」の「おわりに」も終わりを迎えたわけですが......
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記事の終え方が分からない!!!!! *50
*1:天才なので、脚注の付け方を3分で理解した。なおGoogle先生に聞けば1秒もかからない
*2:元々特別なオンリーワン
*3:本質情報ゼロの脚注を多用して読者の集中力を効果的に削ぐスタイル
*4:今年は色々迷惑かけました......
*5:この記事を書き終わったらゆっくり除夜謎でも解こうかな
*6:つまり脱稿が遅れると年内に記事が出ない。結果やいかに
*7:本当はほぼ全部共感したんだけどね
*8:言葉のプロって凄い
*9:あたりまえ
*10:「やっほー」とか「いえーい」とか
*13:ラーメンズのネタの中で「県民の半分がおじいさん もう半分がおばあさん」と評される。地味にアナビの上級生にも同じ高校の出身者がいたりいなかったり
*14:そうでなくてもトラウマを抱く人の死とともにトラウマは終結する
*16:「イヌ取り去るヒツジ」って何?
*17:「謎が解ける記事だ!」と思われた方には申し訳ない
*18:『パスティール』は3000年を舞台としているので、2000年生まれの自分が不死身であればその頃には1000歳。不死身って凄い!!
*19:2000年, 2001年という千年紀の変わり目に生まれた制作陣がこの公演を作っているのはエモい
*20:ここまで読んでもらえて感謝......!
*21:ここから先は少し真面目に書くよ
*22:ニブッチ最高
*23:食らいmax
*24:klάɪmæks
*25:謎解き愛に溢れたタコワサビの記事↓
僕が謎を作るに至った経緯 - AnotherVision Countdown Calendar 2019
*26:注: 『パスティール』がシリアス路線ではないと言っているわけではない
*27:S A G A さが♪
*28:小学校低学年(?)の頃、最終的に暴力で解決しているにも関わらず正義の象徴のような顔をしているアンパン戦士が支持される理由が分からなかった。申し訳ないことに、妹が観ようとするとテレビの電源を頑なにOFFにしていた
*29:日本一「赤門」に似ている決まり文句
*30:仮に『ごんぎつね』を「人が狐を殺す話」と真面目に要約する人間が実際にいたら、その人とは心理的距離を取るように心掛けよう
*31:そういえば可愛いと巷で話題(?)のたさかまくんもカタルシスという言葉を記事中で使っていましたね↓
グミおいしいよ - AnotherVision Countdown Calendar 2019
*32:あとハッピーエンドばかり見ていると飽きる
*33:「だからこそ〜〜だと思います」という文を見ると条件反射的に某政治家構文を連想してしまうのは良くない
*34:今は12/31 AM6:20。本当に年内に記事を公開できるのか心配になってきた
*36:勿論、IQサプリ然り「謎解き」と名付けられていない謎解きはメディアに存在していた
*37:えっふぃ↓のような経済学的分析は一切しない・できない
謎解きの市場を考えてみる話 - AnotherVision Countdown Calendar 2019
*38:ちなみに制作者側の機会損失についてはこのえっふぃの記事を読む前にも考えたことがあるけど、「同所属の東大生は軒並み時給5000円程度(要出典) で働いているから、駒場祭公演の準備期間をバイトに費やしていれば......」とか考えだすと精神衛生上良くないよ。サークル活動の主目的はお金じゃないからね!!!!!
*39:入る前は気付かなかったけど、AnotherVisionはこの点においては申し分ない。お客様を見守るスタッフ数の多さ、上級者向けのUnlimited公演、手厚い新入生へのサポート etc.
*40:でぃばーしてぃ
*41:歴史を遡っても、思想的な差異に対する不寛容さやその差異を支配構造へと方向づける作為が差別を生む事例は多く存在しますね
*42:大小さまざまな学生の団体を含めるとかなり多い
*43:これ別解ではなく本解では?
*44:推理小説の原則。他にも「ヴァン・ダインの二十則」「チャンドラーの九命題」とかある
*45:矢印・等号問題とかね
*46:早く課題をしろ
*47:除夜謎2018は2019/1/1の午前には既に完遂していた
*48:早く課題をしろ
*49:そんな大層なものではない
*50:よいお年を!